サブスク vs 邦ロックアルバム #ロック信者の妄言
2019年、もはやCDの時代は終わったといえるだろう。国内外とも本格的にストリーミング配信によるサブスクリプション(以下、サブスク)が音楽の主流になってきている。
昨今、海外ではサブスクの普及により音楽の作り方も「サブスク対応型」になっているという。例えば、一曲の長さは2~3分台、イントロは15秒以内(または無し)、アルバムの中でのヒット曲の曲順などがあげられる。実際、2019年にサブスクで多く聴かれたアメリカンポップス、ヒップホップ、あるいはK-POPの楽曲やアルバムもこうした特徴を持つものが多い。サブスク導入に後進的で、ガラパゴス志向の日本ではまだ少ないが、こうしたことが海外の音楽市場では当たり前になりつつあるのだ。
では、邦ロックシーンはどうだろうか?世界的にロックが下火になりつつある中で、いまだガラパゴスのイメージが強い邦ロックはサブスク時代にどうなっていくのかを、2019年のアルバムから考えてみたいと思う。
予め言っておくと、ブログなんぞあくまで一個人の妄言に過ぎないので、すべて正しいというわけではない。あしからず。
邦ロックアルバムの現状
今回このブログを書くにあたり、2019年上半期(1月~6月)にリリースされた邦楽ロックバンドのオリジナルフルアルバム9枚を独自に調査した。以下に、各アルバムごとの調査結果と特徴をまとめた。
以下のアルバム9枚は、アーティストの知名度、リスナーの層、各種チャートなどから、独断と偏見でセレクトした。本来ならば2019年下半期の作品も調査対象としなければいけないが、下半期のものも混ぜてしまうと調査数が多くなってしまうこと、下半期のものの一部は今年よりも来年のチャートに反映されることから、2019年上半期の作品に限定した。ベストアルバムや企画アルバムなども調査対象外とした。
調査項目のイントロについて、曲を再生してから歌詞カード記載の歌詞を歌い始めるまでの時間をイントロとしている。歌詞カードに記載のない、フェイクやシャウト、スキャット、ブレス音もイントロに含めた。
調査項目の収録時間などはiTunes Storeに表示されているものを参照した。
「Eye of the Storm」 ‐ ONE OK ROCK
- リリース日:2019年2月13日
- 収録曲数:13曲
- 収録時間:約42分24秒(国内盤)、約42分21秒(海外盤)
- 一曲の平均時間:約3分15.7秒(国内盤)、約3分15.5秒(海外盤)
- 最長の曲の時間:3分44秒
- 最短の曲の時間:2分43秒
- イントロの平均時間:約7.6秒(国内盤)、約8.3秒(海外盤)
- シングル曲数:1曲(配信限定)
- ストリーミング:有
前作より約2年ぶりのリリースとなった本作は、オリコン2019年上半期アルバムランキング第3位を記録している。前作までは1曲目がインスト曲であったのに対し、本作はアルバムと同タイトルの「Eye of the Storm」という迫力のある曲が1曲目に来ている。続く2曲目にはリードトラックである「Stand Out Fit In」、唯一のシングル曲である「Change」はアルバム中盤に配置されている。終盤には、キアーラ(アメリカの女性シンガー)をゲストに迎えた「In the Stars」が収録されている。本作は、海外のPOPSに使われるような打ち込み系のサウンドが目立っている。
ONE OK ROCKは、2018年に国内ドームツアー、オーケストラツアーを成功させている。そして、2019年には北米や欧州を回るワールドツアーと国内アリーナツアーを敢行している。また、ELLEGARDENやエド・シーランのゲストアクトを務めるなど、国内外問わずライブを行っている。
「Chime」 - sumika
- リリース日:2019年3月13日
- 収録曲数:14曲(インスト1曲を含む)
- 収録時間:約54分37秒
- 一曲の平均時間:約3分54.1秒
- 最長の曲の時間:5分2秒
- 最短の曲の時間:2分38秒(インスト)、3分7秒(歌あり)
- イントロの平均時間:約12.8秒(インスト曲を除く)
- シングル曲数:4曲
- ストリーミング:有(リリース当時は無)
前作から約2年ぶりのリリースとなった本作は、メジャー1枚目のフルアルバムである。1曲目にリードトラック「10時の方角」、2曲目にシングル「ファンファーレ」、3曲目にシングル「フィクション」と序盤からアップテンポの代表曲が続けて配置されている。また、シングル未収録のタイアップ曲と、前作にもあったインスト曲が中盤に並んでいる。ストリングスを用いた明るい曲調のものだけでなく、アコースティックでおしゃれなナンバー、ピアノを基調としたバラードが収録されている。
sumikaをロックに含めるかは人それぞれ意見が分かれると思うが、ここでは「ポップロック」というジャンルのバンドとしてみている。sumikaは、2018年にメジャーレーベル移籍を果たし、2019年には日本武道館やアリーナでのライブ、サブスク解禁など勢いを増している。2020年には全国アリーナツアーも決定している。
「VIVIAN KILLERS」 - The Birthday
- リリース日:2019年3月20日
- 収録曲数:12曲
- 収録時間:約48分42秒
- 一曲の平均時間:約4分3.5秒
- 最長の曲の時間:5分44秒
- 最短の曲の時間:2分27秒
- イントロの平均時間:約23.4秒
- シングル曲数:4曲(表題3曲+カップリング1曲)
- ストリーミング:有
前作から約2年ぶりのリリースとなった本作は、前作以上にキレのあるロックサウンドが特徴的である。1曲目の「LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY」は、鋭いギターのイントロと同じ言葉を繰り返すサビで、開幕からインパクトを与える。シングル曲は、3曲目、6曲目、12曲目とバラバラに配置されている。ギター、ベース、ドラムを基調とした8ビートのロックンロールではあるが、例えば10曲目「星降る夜に」のアルペジオ、続く11曲目「DIABLO~HASHIKA~」の嘆く様なボーカルと交互に鳴るギターなど、多彩なアプローチで曲の世界観を表現している。
The Birthdayは、全国ライブハウスツアーを行うだけでなく、各地にフェスなどにも出演している。特に近年では、2018年のAIR JAM出演や2019年の台湾公演など、国や世代を超えて聴かれることが多くなってきている。その傍ら、チバユウスケ(Vo.)のソロプロジェクトをはじめ、個々でも幅広く活動している。
「MAGIC」 - back number
- リリース日:2019年3月27日
- 収録曲数:12曲
- 収録時間:約47分
- 一曲の平均時間:約3分55秒
- 最長の曲の時間:5分25秒
- 最短の曲の時間:3分4秒
- イントロの平均時間:約13.2秒
- シングル曲数:8曲(表題4曲+カップリング4曲)
- ストリーミング:無(2019年現在、ダウンロード購入版は有)
前作から3年以上ぶりのリリースとなった本作は、CD30万枚以上の売り上げを記録している。1曲目「最深部」は、既発曲ではないが、いきなり歌から始まる勢いのあるナンバーだ。タイアップて大きな話題となった「瞬き」、「オールドファッション」、「HAPPY BIRTHDAY」は、それぞれ3曲目、6曲目、11曲目とわかれている。終盤には、「エキシビションマッチ」や「大不正解」といったエッジの効いた曲が収録されている。
back numberといえば、どうしてもラブソングやポップスのイメージが強いが、ロックテイストの曲も少なくない。ライブにおいても、LUNATIC FEST.への出演やドームツアーの開催など活動の幅を広げている。2019年には、地方公演も含む大規模アリーナツアーを敢行している。
「9999」 - THE YELLOW MONKEY
- リリース日:2019年4月17日
- 収録曲数:13曲
- 収録時間:約54分37秒
- 一曲の平均時間:約4分12.1秒
- 最長の曲の時間:5分20秒
- 最短の曲の時間:2分51秒
- イントロの平均時間:約22秒
- シングル曲数:7曲(CD1曲、配信限定4曲、FC先行配信2曲)
- ストリーミング:有
前作から約19年ぶりのリリースとなった本作は、再結成1枚目のフルアルバムとなっている。奇数トラックが未発曲、偶数トラックが先行シングル曲といった曲順になっている。唯一のCDシングル曲である「砂の塔」は、9曲目に収録されている。グラムテイストなクラシカルロックと歌謡曲の要素は健在だが、他ジャンルのスタイルやアプローチも随所に見受けられる。全体的にイントロのギターやベースのリフが特徴的で、それがそれぞれの曲の世界観を引き立てている。
THE YELLOW MONKEYは、2018年にアメリカの名門ATLANTICレコードとタッグを組み、現在は全世界に作品を配信している。2019年には再結成2度目の全国アリーナツアー、そして2020年にかけてはキャリア初のドームツアーを行うなど、デビューから30年経った今もその人気は衰え知らずである。
「anti」 - HYDE
- リリース日:2019年5月3日(配信)、2019年6月19日(CD)
- 収録曲数:13曲
- 収録時間:約44分36秒
- 一曲の平均時間:約3分25.8秒
- 最長の曲の時間:4分45秒
- 最短の曲の時間:2分57秒
- イントロの平均時間:約13.8秒
- シングル曲数:7曲(表題5曲+カップリング2曲)
- ストリーミング:有
前作から約13ぶりのリリースとなった本作は、2000年代のソロ作品あるいはVAMPSとは全く異なるテイストの作品となっている。シングル表題曲5曲のうち4曲が、アルバム前半に配置されている。12曲目「MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱ」から13曲目「ORDINALY WORLD」の流れは、ライブのセットリストのような曲順である。ヘビーでコアなロックをベースに、シンセなどのエレクトロなエッセンスも積極的に取り入れ、NEO TOKYOという独自の世界観を表現している。
VAMPSの活動休止後の2018年から「HYDE」名義でのソロワークを再始動させており、新曲のリリース、全国ZEPPツアー、音楽フェス出演、北米ツアーなど積極的に活動している。それと並行して、アコースティックコンサート「黒ミサ」開催やYOSHIKI(X JAPAN)との楽曲リリースと紅白歌合戦出場、あるいは和歌山市ふるさと観光大使就任など、多方面での活躍が注目されている。
「NEW LOVE」 - B'z
- リリース日:2019年5月29日
- 収録曲数:13曲
- 収録時間:約55分6秒
- 一曲の平均時間:約4分14.3秒
- 最長の曲の時間:6分20秒
- 最短の曲の時間:3分19秒
- イントロの平均時間:約31.5秒
- シングル曲数:無
- ストリーミング:無(2019年現在、ダウンロード購入版は有)
前作から約1年半ぶりのリリースとなった本作は、シングル曲が収録されていないアルバム作品である。アルバムのイメージを感じさせるタイトルチューン「マイニューラブ」が1曲目に来ている。「兵、走る」「WOLF」「デウス」といった、シングル曲ではないもののタイアップが話題となった楽曲も序盤に配置されている。後半の楽曲は、ギターリフやギターソロが印象的な70年代〜80年代のブルージーでハードロックなテイストを持つものが多く収録されている。
B'zは、2018年にデビュー30周年を迎えている。それを記念した大規模ツアーは、途中アクシデントに見舞われつつも、飛ばすことなく完走している。2019年に入ってからも、平成と令和を用いた本作のプロモーション、ラグビーW杯のテーマソング、サポートメンバーを一新してのライブツアーなど、いまだシーンの中心に君臨している。
「834.194」 - サカナクション
- リリース日:2019年6月19日
- 収録曲数:18曲(9曲+9曲の2枚組、インスト1曲を含む)
- 収録時間:約88分34秒(42分33秒+46分1秒)
- 一曲の平均時間:約4分55.2秒(4分43.7秒、5分6.8秒)
- 最長の曲の時間:7分11秒
- 最短の曲の時間:3分46秒
- イントロの平均時間:約27.6秒(インスト、リミックス曲を除く)
- シングル曲数:9曲(表題6曲+カップリング1曲+リカット2曲)
- ストリーミング:有
前作から約6年ぶりのリリースとなった本作は、CD2枚組18曲入りという壮大な作品になっている。1枚目1曲目の「忘れられないの」は、本作のリードトラックであり、後に8センチシングルとしてリカットされている。前年にリリースされたベストアルバムのオープニングナンバーであり、サカナクションの代表曲でもある「新宝島」も1枚目に収録されている。2枚目には、2014年リリースのシングル曲の「グッドバイ」「さよならはエモーション」「蓮の花」が収録されている。また、「ユリイカ」と「セプテンバー」2曲は、1枚目2枚目両方にバージョン違いで収録されている。1枚目は、80年代のテクノやシティポップの要素を、現代のエレクトロなサウンドに昇華させている。対して2枚目は、楽器と電子サウンドの融合というこれまでのような作風のものが多い。ただの2枚組作品ではなく、それぞれコンセプトやサウンドが異なっている。
サカナクションは、2017年にデビュー10周年を迎え、2018年にベストアルバムをリリースしている。本作のリリース前後には、ライブハウス、ホール、アリーナと大小様々な規模のライブを展開している。6.1chサラウンドシステムを導入したアリーナ公演は、ライブシーンにおいて大きな話題を呼んでいる。
「boys」 - My Hair is Bad
- リリース日:2019年6月26日
- 収録曲数:13曲
- 収録時間:約45秒13分
- 一曲の平均時間:約3分28.7秒
- 最長の曲の時間:7分7秒
- 最短の曲の時間:43秒
- イントロの平均時間:約11.2秒
- シングル曲数:無
- ストリーミング:無(2019年現在、ダウンロード購入版は有)
前作から約1年半ぶりのリリースとなった本作は、完全未発曲のみで構成された作品である。1曲目「君が海」は、リードトラックのような楽曲で、PVがYouTubeにて公開されている。中盤には、7分を超える語り口ナンバー「ホームタウン」、43秒のスピードナンバー「愛の毒」といった対称的な楽曲が収録されている。また、ストリングスやサンプラーなどの3ピースバンドサウンド以外の音も取り入れている。
近年のMy Hair is Badは、日本武道館、横浜アリーナ、大阪城ホール、さいたまスーパーアリーナと、大きい会場に挑戦している。一方で、ツアーでは地方のキャパの小さいライブハウスも積極的に回り、彼らのライブに対するスタンスが見て取れる。地元の新潟でも評価は上がっており、2018年には音楽フェス「音楽と髭達」で大トリを務めたり、2019年には朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターでのワンマンライブも敢行している。
9枚のアルバムを分析してみた
同じ日本のロックバンドでもアルバムの形態が全く異なっていることは、上の9枚を見ても分かる通りだ。
海外進出に積極的なONE OK ROCKやHYDEのアルバムは、5分以上の曲がなく、イントロも平均15秒未満、シングル曲や表題曲をアルバム前半に持ってくる構成と、サブスクが主流の音楽シーン意識した作りになっている。また、HYDEのantiはCD発売の1ヶ月前に配信版をリリースしており、CDよりも配信に力を入れている様子がうかがえる。HYDE自身も、兼ねてから日本のガラパゴス志向のシーンを危惧しており、海外に標準を合わせた活動をしているため、そうした方針がアルバム制作にも反映されている。
THE YELLOY MONKEYやThe Birthdayなど90年代から国内のロックシーンで活躍するアーティストは、サブスクを解禁してはいるがそこまで「サブスク意識」のアルバム制作はしていないように思える。例えばシングル曲をアルバム用にマスタリングしなおしている。こうした点からもアルバムのストーリー性や曲同士のつながりを重視していることがうかがえる。彼らのルーツである70年代洋楽シーンには、コンセプトやテーマ性を持ったアルバムが多く存在する。こうした部分からの影響が、彼らのアルバムイメージの基になっているのかもしれない。
サカナクションはサブスクを解禁しているものの、山口一郎(Vo.)はCDの価値も大切にしている。「834.194」もサブスクで聴くと2枚組のコンセプトの意味は伝わりにくいが、CDであればそれぞれのディスクの違いがわかるだろう。サブスクが主流になる中で、モノとしてのCDを在り方やCDという形態でリリースする意味を追求している。
sumikaは、「Chime」リリース時にはストリーミング配信を行っていなかったものの、2019年11月にサブスクを解禁している。このタイミングでのサブスク解禁は、サブスク世代であるリスナーの要望に応えただけでなく、話題作の主題歌にもなっている新曲やアリーナツアーのプロモーションも兼ねていると思う。「Chime」もサブスク解禁前にリリースされたとはいえ、人気の楽曲やタイアップ曲をアルバム前半に置く構成は、リスナー側のことを意識しているのかもしれない。
back numberは、「MAGIC」のみストリーミング配信をしていない。しかし、CDやデジタルアルバムの売り上げランキングでは上位を記録している。これは、彼らの音楽を購入してまで聴きたいリスナーが多くいることを表している。国内を主戦場していることもあり、わざわざストリーミング配信に頼る必要がないということだ。とはいいつつも、「MAGIC」より前の作品はストリーミング配信をしているため、いずれは「MAGIC」もサブスクに登場するかもしれない。
B'zやMy Hair is Badは、サブスクを解禁していない。そのため、6分〜7分の曲を収録することも厭わない。また、アルバムにシングル曲を収録すると、どうしてもその曲ありきのアルバムになりやすい。シングル曲を入れず音源未発表の曲のみでの構成にすることで、リスナーの購買意欲を高めるだけでなく、アルバム内全部の曲をフラットな状態で聴いてもらえる。国内でもサブスクが主流になりつつある中で、サブスクを解禁せずこうした構成のアルバムにすることは、曲単位ではなくアルバム単位で聞いてもらうための一つの方法なのかもしれない。
日本の音楽シーンのこれから
総務省「情報通信白書 平成30年度版」によると、世界では2016年に音楽のダウンロード購入売上高と定額制(サブスク)売上高が逆転している。また、日本レコード協会の統計によると、ここ数年間は毎年CDやダウンロードの売上高が前年比100%未満であるのに対し、サブスク売上高は2019年上半期だけでも前年比120%を超している。世界的にみると、日本はまだCDの文化が残っている国の1つだと思うが、数年も経たないうちに日本の音楽シーンもサブスク主流になるだろう。
別の視点から考えてみよう。少々強引ではあるが音楽を料理で例えると、CDやダウンロードなど購入版のアルバムはフレンチのフルコースや懐石、サブスクはビュッフェ(バイキング)のようなイメージがある。もちろん前者のような前菜からメインからデザートとシェフのおすすめ料理が次から次へ運ばれてくるその流れを好む者も少なくはない。しかし、後者のような一定の金額を払えば好きなものを好きなだけ食べられるシステムは、日本でも大変人気である。まるで食べ放題のような音楽サブスクは、日本国内においても今後ますます市場が拡大していくと思う。
サブスク基準のロックとの葛藤
サブスクがメインストリームになっていき、邦ロックも海外POPSのような「サブスク対応型」になるとしたら、どうだろう?
はっきり言って、サブスク基準のロックシーンはつまらなくなっていくと思う。ここで一つ言っておきたいのは、ONE OK ROCKの「Eye of the Storm」やHYDEの「anti」がつまらないというわけではない。彼らはサブスク主流の海外を視野に制作をしているわけだから、アルバムもそういう方針になるのは当然だし、今の日本であのようなタイプのアルバムは少ないから新鮮に聴こえる。しかし、せっかく半世紀もの間邦ロックが一般化そして多様化してきたのに、サブスク対応型の作品ばかりになってしまっては今以上に「洋楽の真似」と言われるかもしれない。
サブスク時代にロックが合っていないことは認知しておくべきだろう。冒頭でもふれたが、曲長が短く、間奏やイントロの楽器ソロも少ない曲が、ストリーミングにおけるヒット曲のよくあるパターンである。しかしながら、楽器主体のロックというジャンルにおいて、イントロや間奏といった楽器のみのパートを削ることは、ロックの醍醐味を失くすことに等しい。アルバムについても同様だ。リスナー意識サブスク意識のアルバムの方がチャートには載りやすくなるが、一方でアーティストの考えるコンセプチュアルな部分は失われるだろう。
B'zやMy Hair is Badがまだサブスクを解禁しない理由は、サブスクとロックの相性が合わないを知っている、もしくはリスナーに媚びを売らず音楽をやりたいのかもしれない。
今後の邦ロックに求められるのは、サブスクとどう向き合っていくかということだ。どのように聴かれたいのか、どのように聴かせたいのか。THE YELLOW MONKEYやThe Birthdayのようにクラシカルなスタイルを続けるか、サカナクションのようにストリーミングにはないCDの魅力や体験を提供するか。もちろん、ONE OK ROCKやHYDEのようにサブスクの波を利用するもありだし、B'zやMy Hair is Badのようにサブスクの波に乗らないもありだ。やり方はそれぞれのアーティスト次第だが、今まで以上にアーティスト側が音楽のカタチや届け方といった部分まで考えることが必要になってきそうだ。ロックミュージシャンがビジネスについて考えるのは、ロックじゃない。確かにそうだ。でも、シーンの現状を知っておいた方がいいときもある。
2019年現在、日本でも音楽サブスクの利用人口が増加したとはいえ、世界的にみるとまだ発展途上であり、所々に課題が残っている。CDアルバムもそこそこは売れている。それでも時代は変わる。ドーナツ盤、カセットテープ、8センチシングル、音楽のカタチは変わる。そうした流れの中で邦ロックも変わるべきか、変わらないべきか。変わり始めているロックバンドもいれば、まだ変わらないスタンスを持っているロックバンドもいるのが今日の邦ロックシーンだ。
こんな感じで今回は、2019年の邦ロックアルバムを妄言混じりに考察してみた。賛否両論、様々な解釈意見があって当然だ。2020年代、そしてサブスクの時代にも邦楽ロックシーンがさらに盛り上がることを願っている。
参照
https://wired.jp/2017/06/11/how-streaming-changes-music/
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n1100000.pdf
https://www.riaj.or.jp/f/data/
「売れる売れない二の次で かっこのよろしい歌ば作り 聴いてもらえりゃ万々歳 そんなあたしは傾奇者」と、あるロックな男が言っていたよな....。