オギロックフェス

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イエモン30年分の本気を見た。 〈ツアー感想〉

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2019年12月28日、THE YELLOW MONKEY結成30周年を迎えた。バンドのバースデーであるこの日、彼らの記念ライブがナゴヤドームで開催された。この公演は、イエモン史上初となる3大都市ドームツアーの初日公演ということもあり、全国から4万人近くのファンがナゴヤドームに集結した。

例年、12月28日は「メカラ・ウロコ」と題した普段あまり演奏されないマニアックな楽曲を中心としたライブでバンドの結成日をお祝いしてきた。しかし、その「メカラ・ウロコ」シリーズは昨年ファイナルを迎え、一旦幕を閉じた。

そして今回のナゴヤドーム公演は、「メカラ・ウロコ」ではない12月28日のライブとして開催された。ドーム公演ということで代表曲多めのメニューになるのか、記念日らしくレア曲もやるのか、ファンは期待を寄せていた。

 

30th Anniversary DOME TOUR ナゴヤドーム公演

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ライブ開演前、場内にはいつものように洋楽のBGMがかかっていた。往年のロックはもちろん、ルベッツやABBA、ウィリアムテル序曲までジャンルは様々であった。

ステージは、メインステージから中央に長く伸びた花道と、その先端にセンターステージが用意されていた。

迎えた開演時間の17時、場内ビジョンには「THE YELLOW MONKEY」の文字と、1989.12.28から2019.12.28へのカウンターが表示された。そして、エマさん、ヒーセさん、アニーさんがメインステージに登場するとファンは大歓声で迎えた。

 

エマさんがアルペジオを弾き始めた瞬間、ドームのファンがどよめいた。そして、吉井さんがセンターステージに現れアコギを持って歌い始めた。間違いない、「Second Cry」だ。この曲は、軍人ジャガーを主人公としたコンセプトアルバム「jaguar hard pain」のオープニングナンバーであり、ライブの1曲目に演るのは久々だ。そして30周年の記念日、名古屋にジャガーが降臨したのだ。強めの照明により、吉井さんはシルエットでしか見えなかったが、あれは吉井さんではなくジャガーだったのではないだろうか。そう錯覚させる幕開けであった。

続く2曲目は、同じくアルバム「jaguar hard pain」より「ROCK STAR」であった。イエモンというロックバンドを表したこの曲で、会場のボルテージは一気に上がっていった。

そして3曲目には代表曲である「SPARK」が早くも演奏され、コアなファン以外も巻き込んでいった。

 

MCを挟み、4曲目は最新アルバム「9999」から評判の高い「Balloon Balloon」。今年4月〜9月に行われた「9999」を提げたアリーナツアーでは名古屋公演がなかったため、今回待望の名古屋初披露であった。

5曲目は、「A HENな飴玉」であった。この曲も「jaguar hard pain」収録曲であるが、まさかドームでやるとは思っていなかった。鋭いギターサウンドが、ファンを妖しい世界へといざなった。

6曲目は、特に再結成後から演奏回数が多くなった楽曲「追憶のマーメイド」であった。グラマラスな世界観を持つこの曲に、ドームのオーディエンスは見惚れていた。

エマさんのギターソロが始まると、ドームが緊張感に包まれた。そして7曲目の「球根」が始まった。ギターソロ含め10分の長尺でありながら、お客さん一人一人に向け力強い演奏がされた。

 

ここでメンバーはセンターステージへと移動した。センターステージは、リフター装置が付いており、ドームの真ん中にライブハウスのような小さなステージが生まれた。

『インディーズ期のツアーで訪れた名古屋でエマさんが正式加入した』との名古屋にまつわるエピソードを交えたMCの後、エマさんと吉井さんの初期の共作「THIS IS FOR YOU」が演奏された。

吉井さんが12弦アコースティックギターに持ち替えると、「LOVERS ON BACK STREET」が始まった。この曲は、インディーズアルバム「Bunched Birth」に収録れているイエモンとしては最古の楽曲で、結成日にふさわしい選曲であった。

「Foxy Blue Love」「SLEEPLESS IMAGINATION」の初期のブギー2曲が続けて演奏された。解散前の「メカラ・ウロコ」シリーズではおなじみのこの2曲の流れが、久しぶりに披露された。

続く「I don't know」は、アルバム「9999」の曲であり、30年前の曲たちとのコントラストをなしていた。

センターステージでは、「BURN」「LOVE LOVE SHOW」といった全盛期のシングル曲も演奏され、前後左右をファンに囲まれながらドームをさらに盛り上げていった。

センターステージラストの曲は「JAM」であった。赤の照明がドームを真っ赤に染め上げ、その真ん中で30年間イエローモンキーにかかわったすべての人にこの曲が捧げられた。2019年もロックンロールアンセムとして、特別な輝きを放っていた。

「JAM」の演奏が終わると、メンバーはドーム後方から一旦バックステージへとはけていった。

 

場内に未発表曲が流れると、ビジョンにはこれまでのライブ全公演がロールテロップで映し出された。

しばらくすると、大勢のチンドン屋さんが現れそれぞれ楽器を鳴らしながら、ドームをにぎやかな空気に変えていった。メンバーがメインステージに再登場すると、最新曲「DAN DAN」から第2部がスタートした。「DAN DAN」は30周年のお祝い曲のようなナンバーで、今回が初披露であったが初披露とは思えないほどの一体感があった。曲終わりには、花火が打ち上げられ30周年に華を添えた。

吉井さんが赤いファイヤーバードを持ち、「パンチドランカー」が演奏された。エマさんも振りの大きい演奏で、会場をヒートアップさせていた。

続く「天道虫」は、この1年間でライブを盛り上げるロックチューンとして定着していった。

 アニーさんのドラムから「"I"」が始まった。4thアルバム「Smile」収録ナンバーであるが、この曲もドームでやるとは思わなかった。ビジョンには"FUCK ME"という文字が大きく映し出され、ドームのファンを煽っていった。

攻撃的なロックナンバーが続く中、「SUCK OF LIFE」では吉井さんとエマさんが30年目の絡みを見せ、会場を沸かせた。

 

ビジョンに無数の星が映し出されると、「Horizon」が始まった。再結成ツアーのドキュメンタリー映画「オトトキ」のテーマソングでもあるこの曲は、エマさんが作詞作曲を手掛け、再結成後のアンセム的ナンバーとして歌われてきた。

続けて「father」が演奏された。映画「オトトキ」でも"父親"がキーワードとしてあった。「Horizon」とセットでの演奏には、大きな意味が感じられた。

 

本編ラストの曲の前、吉井さんがストラトを構えた。いつものライブであれば、ここで「バラ色の日々」のピアノイントロが流れるはずだ。しかし、ギターを構えたまま吉井さんのMCが始まった。『ロックは現実とそれ以外を結ぶもの』『イエローモンキーの曲には女性が登場する』など、イエローモンキーの由来から楽曲まで様々なことが語られた。

そして、本編最後の曲が始まった。「シルクスカーフに帽子のマダム」だ。2ndアルバム「未公開のエクスペリエンスムービー」のラストナンバーで、7分を越す長尺バラード曲だが、再結成後にやっていなかった曲でもあった。オープニングでジャガーさんが登場し、エンディングでその恋人のマリーさんが登場する、こんなドームライブは誰も想像していなかっただろう。語りかけるような歌と、吉井さんによるギターソロが印象的だが、アウトロ前のファルセットまでキレイに再現していた。

 

アンコールは、「メカラ・ウロコ」シリーズで恒例だった「おそそブギウギ」を、「名古屋ブギウギ」としてメンバー全員で歌った。そして、お馴染み「アバンギャルドにいこうよ」の流れで盛り上げた。

「バラ色の日々」は、イントロのシンガロングをカットしたショートver.で披露された。吉井ソロでは時々あったが、イエモンのライブでは珍しいアレンジだ。

「ALRIGHT」も、この30周年の記念の日には相応しいナンバーだ。間奏では、「30周年おめでとう」と祝福の言葉をメンバーやファンにかけていた。

ラストナンバーは、もちろん「悲しきASIAN BOY」だ。イエローモンキーを象徴する曲であり、メンバーもファンもこの曲無しでは終われないだろう。ドーム全員で「THE YELLOW MONEY」と叫び、演奏は終了した。

 

エンディングの挨拶では、アルバム「9999」が日本レコード大賞最優秀アルバム賞にノミネートされたとの報告があった。

メンバーがはけた後、場内には未公開曲「未来はみないで」が流れ、30周年の記念ライブは幕を下ろした。

 

ライブを終えて

 

セットリストを振り返ると、アリーナツアー「GRATEFUL SPOONFUL」+「メカラ・ウロコ」といった感じだった。周年記念のドームということで、ヒット曲中心になるかと思っていたが、イエモンの歴史を語る上で欠かせないアルバム曲も多数演奏され、ファンの期待をいい意味で裏切るセトリであった。ドームライブなのに、全盛期の名盤と称されるアルバム「SICKS」の曲をやらず初期のアングラな楽曲を多めにやる姿勢も、実にイエモンらしいといえばイエモンらしいが、改めて見るとカッコ良すぎた。

 

THE YELLOW MONEYにとって2019年は、非常に大きな年であった。19年ぶりのアルバムリリース、アリーナツアー、ドーム公演と、もはや再結成バンドの枠を超えた活動をした1年であった。

2020年4月の東京ドーム公演をもって、充電期間に入ると宣言しているが、水面下では楽曲制作や企画が行われることだろう。まだまだステージで輝き続けるイエモンの次を楽しみに待ちたいと思う。

サブスク vs 邦ロックアルバム #ロック信者の妄言

2019年、もはやCDの時代は終わったといえるだろう。国内外とも本格的にストリーミング配信によるサブスクリプション(以下、サブスク)が音楽の主流になってきている。

昨今、海外ではサブスクの普及により音楽の作り方も「サブスク対応型」になっているという。例えば、一曲の長さは2~3分台、イントロは15秒以内(または無し)、アルバムの中でのヒット曲の曲順などがあげられる。実際、2019年にサブスクで多く聴かれたアメリカンポップス、ヒップホップ、あるいはK-POPの楽曲やアルバムもこうした特徴を持つものが多い。サブスク導入に後進的で、ガラパゴス志向の日本ではまだ少ないが、こうしたことが海外の音楽市場では当たり前になりつつあるのだ。

では、邦ロックシーンはどうだろうか?世界的にロックが下火になりつつある中で、いまだガラパゴスのイメージが強い邦ロックはサブスク時代にどうなっていくのかを、2019年のアルバムから考えてみたいと思う。

予め言っておくと、ブログなんぞあくまで一個人の妄言に過ぎないので、すべて正しいというわけではない。あしからず。

 

 

邦ロックアルバムの現状

今回このブログを書くにあたり、2019年上半期(1月~6月)にリリースされた邦楽ロックバンドのオリジナルフルアルバム9枚を独自に調査した。以下に、各アルバムごとの調査結果と特徴をまとめた。

以下のアルバム9枚は、アーティストの知名度、リスナーの層、各種チャートなどから、独断と偏見でセレクトした。本来ならば2019年下半期の作品も調査対象としなければいけないが、下半期のものも混ぜてしまうと調査数が多くなってしまうこと、下半期のものの一部は今年よりも来年のチャートに反映されることから、2019年上半期の作品に限定した。ベストアルバムや企画アルバムなども調査対象外とした。

調査項目のイントロについて、曲を再生してから歌詞カード記載の歌詞を歌い始めるまでの時間をイントロとしている。歌詞カードに記載のない、フェイクやシャウト、スキャット、ブレス音もイントロに含めた。

調査項目の収録時間などはiTunes Storeに表示されているものを参照した。

 

「Eye of the Storm」 ‐ ONE OK ROCK

  • リリース日:2019年2月13日
  • 収録曲数:13曲
  • 収録時間:約42分24秒(国内盤)、約42分21秒(海外盤)
  • 一曲の平均時間:約3分15.7秒(国内盤)、約3分15.5秒(海外盤)
  • 最長の曲の時間:3分44秒
  • 最短の曲の時間:2分43秒
  • イントロの平均時間:約7.6秒(国内盤)、約8.3秒(海外盤)
  • シングル曲数:1曲(配信限定)
  • ストリーミング:有

前作より約2年ぶりのリリースとなった本作は、オリコン2019年上半期アルバムランキング第3位を記録している。前作までは1曲目がインスト曲であったのに対し、本作はアルバムと同タイトルの「Eye of the Storm」という迫力のある曲が1曲目に来ている。続く2曲目にはリードトラックである「Stand Out Fit In」、唯一のシングル曲である「Change」はアルバム中盤に配置されている。終盤には、キアーラ(アメリカの女性シンガー)をゲストに迎えた「In the Stars」が収録されている。本作は、海外のPOPSに使われるような打ち込み系のサウンドが目立っている。

ONE OK ROCKは、2018年に国内ドームツアー、オーケストラツアーを成功させている。そして、2019年には北米や欧州を回るワールドツアーと国内アリーナツアーを敢行している。また、ELLEGARDENエド・シーランのゲストアクトを務めるなど、国内外問わずライブを行っている。

Eye of the Storm

Eye of the Storm

 

「Chime」 - sumika

  • リリース日:2019年3月13日
  • 収録曲数:14曲(インスト1曲を含む)
  • 収録時間:約54分37秒
  • 一曲の平均時間:約3分54.1秒
  • 最長の曲の時間:5分2秒
  • 最短の曲の時間:2分38秒(インスト)、3分7秒(歌あり)
  • イントロの平均時間:約12.8秒(インスト曲を除く)
  • シングル曲数:4曲
  • ストリーミング:有(リリース当時は無)

前作から約2年ぶりのリリースとなった本作は、メジャー1枚目のフルアルバムである。1曲目にリードトラック「10時の方角」、2曲目にシングル「ファンファーレ」、3曲目にシングル「フィクション」と序盤からアップテンポの代表曲が続けて配置されている。また、シングル未収録のタイアップ曲と、前作にもあったインスト曲が中盤に並んでいる。ストリングスを用いた明るい曲調のものだけでなく、アコースティックでおしゃれなナンバー、ピアノを基調としたバラードが収録されている。

sumikaをロックに含めるかは人それぞれ意見が分かれると思うが、ここでは「ポップロック」というジャンルのバンドとしてみている。sumikaは、2018年にメジャーレーベル移籍を果たし、2019年には日本武道館やアリーナでのライブ、サブスク解禁など勢いを増している。2020年には全国アリーナツアーも決定している。

Chime

Chime

 

「VIVIAN KILLERS」 - The Birthday

  • リリース日:2019年3月20日
  • 収録曲数:12曲
  • 収録時間:約48分42秒
  • 一曲の平均時間:約4分3.5秒
  • 最長の曲の時間:5分44秒
  • 最短の曲の時間:2分27秒
  • イントロの平均時間:約23.4秒
  • シングル曲数:4曲(表題3曲+カップリング1曲)
  • ストリーミング:有

前作から約2年ぶりのリリースとなった本作は、前作以上にキレのあるロックサウンドが特徴的である。1曲目の「LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY」は、鋭いギターのイントロと同じ言葉を繰り返すサビで、開幕からインパクトを与える。シングル曲は、3曲目、6曲目、12曲目とバラバラに配置されている。ギター、ベース、ドラムを基調とした8ビートのロックンロールではあるが、例えば10曲目「星降る夜に」のアルペジオ、続く11曲目「DIABLO~HASHIKA~」の嘆く様なボーカルと交互に鳴るギターなど、多彩なアプローチで曲の世界観を表現している。

The Birthdayは、全国ライブハウスツアーを行うだけでなく、各地にフェスなどにも出演している。特に近年では、2018年のAIR JAM出演や2019年の台湾公演など、国や世代を超えて聴かれることが多くなってきている。その傍ら、チバユウスケ(Vo.)のソロプロジェクトをはじめ、個々でも幅広く活動している。

Vivian Killers

Vivian Killers

 

「MAGIC」 - back number

  • リリース日:2019年3月27日
  • 収録曲数:12曲
  • 収録時間:約47分
  • 一曲の平均時間:約3分55秒
  • 最長の曲の時間:5分25秒
  • 最短の曲の時間:3分4秒
  • イントロの平均時間:約13.2秒
  • シングル曲数:8曲(表題4曲+カップリング4曲)
  • ストリーミング:無(2019年現在、ダウンロード購入版は有)

前作から3年以上ぶりのリリースとなった本作は、CD30万枚以上の売り上げを記録している。1曲目「最深部」は、既発曲ではないが、いきなり歌から始まる勢いのあるナンバーだ。タイアップて大きな話題となった「瞬き」、「オールドファッション」、「HAPPY BIRTHDAY」は、それぞれ3曲目、6曲目、11曲目とわかれている。終盤には、「エキシビションマッチ」や「大不正解」といったエッジの効いた曲が収録されている。

back numberといえば、どうしてもラブソングやポップスのイメージが強いが、ロックテイストの曲も少なくない。ライブにおいても、LUNATIC FEST.への出演やドームツアーの開催など活動の幅を広げている。2019年には、地方公演も含む大規模アリーナツアーを敢行している。

Magic

Magic

  • back number
  • J-Pop
  • ¥2241

 

「9999」 - THE YELLOW MONKEY

  • リリース日:2019年4月17日
  • 収録曲数:13曲
  • 収録時間:約54分37秒
  • 一曲の平均時間:約4分12.1秒
  • 最長の曲の時間:5分20秒
  • 最短の曲の時間:2分51秒
  • イントロの平均時間:約22秒
  • シングル曲数:7曲(CD1曲、配信限定4曲、FC先行配信2曲)
  • ストリーミング:有

前作から約19年ぶりのリリースとなった本作は、再結成1枚目のフルアルバムとなっている。奇数トラックが未発曲、偶数トラックが先行シングル曲といった曲順になっている。唯一のCDシングル曲である「砂の塔」は、9曲目に収録されている。グラムテイストなクラシカルロックと歌謡曲の要素は健在だが、他ジャンルのスタイルやアプローチも随所に見受けられる。全体的にイントロのギターやベースのリフが特徴的で、それがそれぞれの曲の世界観を引き立てている。

THE YELLOW MONKEYは、2018年にアメリカの名門ATLANTICレコードとタッグを組み、現在は全世界に作品を配信している。2019年には再結成2度目の全国アリーナツアー、そして2020年にかけてはキャリア初のドームツアーを行うなど、デビューから30年経った今もその人気は衰え知らずである。

9999

9999

 

「anti」 - HYDE

  • リリース日:2019年5月3日(配信)、2019年6月19日(CD)
  • 収録曲数:13曲
  • 収録時間:約44分36秒
  • 一曲の平均時間:約3分25.8秒
  • 最長の曲の時間:4分45秒
  • 最短の曲の時間:2分57秒
  • イントロの平均時間:約13.8秒
  • シングル曲数:7曲(表題5曲+カップリング2曲)
  • ストリーミング:有

前作から約13ぶりのリリースとなった本作は、2000年代のソロ作品あるいはVAMPSとは全く異なるテイストの作品となっている。シングル表題曲5曲のうち4曲が、アルバム前半に配置されている。12曲目「MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱ」から13曲目「ORDINALY WORLD」の流れは、ライブのセットリストのような曲順である。ヘビーでコアなロックをベースに、シンセなどのエレクトロなエッセンスも積極的に取り入れ、NEO TOKYOという独自の世界観を表現している。

VAMPSの活動休止後の2018年から「HYDE」名義でのソロワークを再始動させており、新曲のリリース、全国ZEPPツアー、音楽フェス出演、北米ツアーなど積極的に活動している。それと並行して、アコースティックコンサート「黒ミサ」開催やYOSHIKIX JAPAN)との楽曲リリースと紅白歌合戦出場、あるいは和歌山市ふるさと観光大使就任など、多方面での活躍が注目されている。

Anti

Anti

  • HYDE
  • ロック
  • ¥2139

 

「NEW LOVE」 - B'z

  • リリース日:2019年5月29日
  • 収録曲数:13曲
  • 収録時間:約55分6秒
  • 一曲の平均時間:約4分14.3秒
  • 最長の曲の時間:6分20秒
  • 最短の曲の時間:3分19秒
  • イントロの平均時間:約31.5秒
  • シングル曲数:無
  • ストリーミング:無(2019年現在、ダウンロード購入版は有)

前作から約1年半ぶりのリリースとなった本作は、シングル曲が収録されていないアルバム作品である。アルバムのイメージを感じさせるタイトルチューン「マイニューラブ」が1曲目に来ている。「兵、走る」「WOLF」「デウス」といった、シングル曲ではないもののタイアップが話題となった楽曲も序盤に配置されている。後半の楽曲は、ギターリフやギターソロが印象的な70年代〜80年代のブルージーでハードロックなテイストを持つものが多く収録されている。

B'zは、2018年にデビュー30周年を迎えている。それを記念した大規模ツアーは、途中アクシデントに見舞われつつも、飛ばすことなく完走している。2019年に入ってからも、平成と令和を用いた本作のプロモーション、ラグビーW杯のテーマソング、サポートメンバーを一新してのライブツアーなど、いまだシーンの中心に君臨している。

NEW LOVE

NEW LOVE

  • B'z
  • ロック
  • ¥2546

 

「834.194」 - サカナクション

  • リリース日:2019年6月19日
  • 収録曲数:18曲(9曲+9曲の2枚組、インスト1曲を含む)
  • 収録時間:約88分34秒(42分33秒+46分1秒)
  • 一曲の平均時間:約4分55.2秒(4分43.7秒、5分6.8秒)
  • 最長の曲の時間:7分11秒
  • 最短の曲の時間:3分46秒
  • イントロの平均時間:約27.6秒(インスト、リミックス曲を除く)
  • シングル曲数:9曲(表題6曲+カップリング1曲+リカット2曲)
  • ストリーミング:有

前作から約6年ぶりのリリースとなった本作は、CD2枚組18曲入りという壮大な作品になっている。1枚目1曲目の「忘れられないの」は、本作のリードトラックであり、後に8センチシングルとしてリカットされている。前年にリリースされたベストアルバムのオープニングナンバーであり、サカナクションの代表曲でもある「新宝島」も1枚目に収録されている。2枚目には、2014年リリースのシングル曲の「グッドバイ」「さよならはエモーション」「蓮の花」が収録されている。また、「ユリイカ」と「セプテンバー」2曲は、1枚目2枚目両方にバージョン違いで収録されている。1枚目は、80年代のテクノやシティポップの要素を、現代のエレクトロなサウンドに昇華させている。対して2枚目は、楽器と電子サウンドの融合というこれまでのような作風のものが多い。ただの2枚組作品ではなく、それぞれコンセプトやサウンドが異なっている。

サカナクションは、2017年にデビュー10周年を迎え、2018年にベストアルバムをリリースしている。本作のリリース前後には、ライブハウス、ホール、アリーナと大小様々な規模のライブを展開している。6.1chサラウンドシステムを導入したアリーナ公演は、ライブシーンにおいて大きな話題を呼んでいる。

834.194

834.194

 

「boys」 - My Hair is Bad

  • リリース日:2019年6月26日
  • 収録曲数:13曲
  • 収録時間:約45秒13分
  • 一曲の平均時間:約3分28.7秒
  • 最長の曲の時間:7分7秒
  • 最短の曲の時間:43秒
  • イントロの平均時間:約11.2秒
  • シングル曲数:無
  • ストリーミング:無(2019年現在、ダウンロード購入版は有)

前作から約1年半ぶりのリリースとなった本作は、完全未発曲のみで構成された作品である。1曲目「君が海」は、リードトラックのような楽曲で、PVがYouTubeにて公開されている。中盤には、7分を超える語り口ナンバー「ホームタウン」、43秒のスピードナンバー「愛の毒」といった対称的な楽曲が収録されている。また、ストリングスやサンプラーなどの3ピースバンドサウンド以外の音も取り入れている。

近年のMy Hair is Badは、日本武道館横浜アリーナ大阪城ホールさいたまスーパーアリーナと、大きい会場に挑戦している。一方で、ツアーでは地方のキャパの小さいライブハウスも積極的に回り、彼らのライブに対するスタンスが見て取れる。地元の新潟でも評価は上がっており、2018年には音楽フェス「音楽と髭達」で大トリを務めたり、2019年には朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターでのワンマンライブも敢行している。

Boys

Boys

 

9枚のアルバムを分析してみた

同じ日本のロックバンドでもアルバムの形態が全く異なっていることは、上の9枚を見ても分かる通りだ。

海外進出に積極的なONE OK ROCKHYDEのアルバムは、5分以上の曲がなく、イントロも平均15秒未満、シングル曲や表題曲をアルバム前半に持ってくる構成と、サブスクが主流の音楽シーン意識した作りになっている。また、HYDEのantiはCD発売の1ヶ月前に配信版をリリースしており、CDよりも配信に力を入れている様子がうかがえる。HYDE自身も、兼ねてから日本のガラパゴス志向のシーンを危惧しており、海外に標準を合わせた活動をしているため、そうした方針がアルバム制作にも反映されている。

THE YELLOY MONKEYやThe Birthdayなど90年代から国内のロックシーンで活躍するアーティストは、サブスクを解禁してはいるがそこまで「サブスク意識」のアルバム制作はしていないように思える。例えばシングル曲をアルバム用にマスタリングしなおしている。こうした点からもアルバムのストーリー性や曲同士のつながりを重視していることがうかがえる。彼らのルーツである70年代洋楽シーンには、コンセプトやテーマ性を持ったアルバムが多く存在する。こうした部分からの影響が、彼らのアルバムイメージの基になっているのかもしれない。

サカナクションはサブスクを解禁しているものの、山口一郎(Vo.)はCDの価値も大切にしている。「834.194」もサブスクで聴くと2枚組のコンセプトの意味は伝わりにくいが、CDであればそれぞれのディスクの違いがわかるだろう。サブスクが主流になる中で、モノとしてのCDを在り方やCDという形態でリリースする意味を追求している。

sumikaは、「Chime」リリース時にはストリーミング配信を行っていなかったものの、2019年11月にサブスクを解禁している。このタイミングでのサブスク解禁は、サブスク世代であるリスナーの要望に応えただけでなく、話題作の主題歌にもなっている新曲やアリーナツアーのプロモーションも兼ねていると思う。「Chime」もサブスク解禁前にリリースされたとはいえ、人気の楽曲やタイアップ曲をアルバム前半に置く構成は、リスナー側のことを意識しているのかもしれない。

back numberは、「MAGIC」のみストリーミング配信をしていない。しかし、CDやデジタルアルバムの売り上げランキングでは上位を記録している。これは、彼らの音楽を購入してまで聴きたいリスナーが多くいることを表している。国内を主戦場していることもあり、わざわざストリーミング配信に頼る必要がないということだ。とはいいつつも、「MAGIC」より前の作品はストリーミング配信をしているため、いずれは「MAGIC」もサブスクに登場するかもしれない。

B'zやMy Hair is Badは、サブスクを解禁していない。そのため、6分〜7分の曲を収録することも厭わない。また、アルバムにシングル曲を収録すると、どうしてもその曲ありきのアルバムになりやすい。シングル曲を入れず音源未発表の曲のみでの構成にすることで、リスナーの購買意欲を高めるだけでなく、アルバム内全部の曲をフラットな状態で聴いてもらえる。国内でもサブスクが主流になりつつある中で、サブスクを解禁せずこうした構成のアルバムにすることは、曲単位ではなくアルバム単位で聞いてもらうための一つの方法なのかもしれない。

 

日本の音楽シーンのこれから

総務省「情報通信白書 平成30年度版」によると、世界では2016年に音楽のダウンロード購入売上高と定額制(サブスク)売上高が逆転している。また、日本レコード協会の統計によると、ここ数年間は毎年CDやダウンロードの売上高が前年比100%未満であるのに対し、サブスク売上高は2019年上半期だけでも前年比120%を超している。世界的にみると、日本はまだCDの文化が残っている国の1つだと思うが、数年も経たないうちに日本の音楽シーンもサブスク主流になるだろう。

別の視点から考えてみよう。少々強引ではあるが音楽を料理で例えると、CDやダウンロードなど購入版のアルバムはフレンチのフルコースや懐石、サブスクはビュッフェ(バイキング)のようなイメージがある。もちろん前者のような前菜からメインからデザートとシェフのおすすめ料理が次から次へ運ばれてくるその流れを好む者も少なくはない。しかし、後者のような一定の金額を払えば好きなものを好きなだけ食べられるシステムは、日本でも大変人気である。まるで食べ放題のような音楽サブスクは、日本国内においても今後ますます市場が拡大していくと思う。

 

サブスク基準のロックとの葛藤

サブスクがメインストリームになっていき、邦ロックも海外POPSのような「サブスク対応型」になるとしたら、どうだろう?

はっきり言って、サブスク基準のロックシーンはつまらなくなっていくと思う。ここで一つ言っておきたいのは、ONE OK ROCKの「Eye of the Storm」やHYDEの「anti」がつまらないというわけではない。彼らはサブスク主流の海外を視野に制作をしているわけだから、アルバムもそういう方針になるのは当然だし、今の日本であのようなタイプのアルバムは少ないから新鮮に聴こえる。しかし、せっかく半世紀もの間邦ロックが一般化そして多様化してきたのに、サブスク対応型の作品ばかりになってしまっては今以上に「洋楽の真似」と言われるかもしれない。

サブスク時代にロックが合っていないことは認知しておくべきだろう。冒頭でもふれたが、曲長が短く、間奏やイントロの楽器ソロも少ない曲が、ストリーミングにおけるヒット曲のよくあるパターンである。しかしながら、楽器主体のロックというジャンルにおいて、イントロや間奏といった楽器のみのパートを削ることは、ロックの醍醐味を失くすことに等しい。アルバムについても同様だ。リスナー意識サブスク意識のアルバムの方がチャートには載りやすくなるが、一方でアーティストの考えるコンセプチュアルな部分は失われるだろう。

B'zやMy Hair is Badがまだサブスクを解禁しない理由は、サブスクとロックの相性が合わないを知っている、もしくはリスナーに媚びを売らず音楽をやりたいのかもしれない。

今後の邦ロックに求められるのは、サブスクとどう向き合っていくかということだ。どのように聴かれたいのか、どのように聴かせたいのか。THE YELLOW MONKEYThe Birthdayのようにクラシカルなスタイルを続けるか、サカナクションのようにストリーミングにはないCDの魅力や体験を提供するか。もちろん、ONE OK ROCKHYDEのようにサブスクの波を利用するもありだし、B'zやMy Hair is Badのようにサブスクの波に乗らないもありだ。やり方はそれぞれのアーティスト次第だが、今まで以上にアーティスト側が音楽のカタチや届け方といった部分まで考えることが必要になってきそうだ。ロックミュージシャンがビジネスについて考えるのは、ロックじゃない。確かにそうだ。でも、シーンの現状を知っておいた方がいいときもある。

2019年現在、日本でも音楽サブスクの利用人口が増加したとはいえ、世界的にみるとまだ発展途上であり、所々に課題が残っている。CDアルバムもそこそこは売れている。それでも時代は変わる。ドーナツ盤、カセットテープ、8センチシングル、音楽のカタチは変わる。そうした流れの中で邦ロックも変わるべきか、変わらないべきか。変わり始めているロックバンドもいれば、まだ変わらないスタンスを持っているロックバンドもいるのが今日の邦ロックシーンだ。

  

こんな感じで今回は、2019年の邦ロックアルバムを妄言混じりに考察してみた。賛否両論、様々な解釈意見があって当然だ。2020年代、そしてサブスクの時代にも邦楽ロックシーンがさらに盛り上がることを願っている。

 

参照

https://wired.jp/2017/06/11/how-streaming-changes-music/

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n1100000.pdf

https://www.riaj.or.jp/f/data/

 

「売れる売れない二の次で かっこのよろしい歌ば作り 聴いてもらえりゃ万々歳 そんなあたしは傾奇者」と、あるロックな男が言っていたよな....。

Mr.Childrenにのしかかる重力とは。〈ツアー感想〉

想いが凝縮されたアルバム「重力と呼吸」

2018年10月3日、Mr.Children(以下、ミスチル)の実に19枚目となるオリジナルアルバム「重力と呼吸」が発売となった。収録曲数10曲かつ特典なし1形態のみの発売であり、一見あっさりした印象があるかもしれない。2015年発売の前作「REFLECTION」が全23曲収録(CDは14曲)かつ複数形態での発売であったため、尚更今作のボリューム感はあまりないように思えた。

しかし実際にアルバムを手に取り中身を聴いてみると、そんな思い込みは愚かだった。デビュー25周年を経て、長年共に活動してきたプロデューサーである小林武史さんの手を全く借りずに作られたこのアルバムは、今のミスチルが次のステージへ行くための決意やこの先生きていることへ対しての叫びが表れた作品となった。

勝手な解釈になるが「重力と呼吸」というタイトルも、現代社会において人々は色々な重圧や見えない力に押し潰されそうになるがその中でも呼吸を忘れずに生きよう、というメッセージが込められているのかもしれない。

 

ドームツアー「Against All Gravity」東京ドーム初日公演f:id:ogixxxxfes:20190729121415j:image

さて、ミスチルはオリジナルアルバムを発表した後、それを引っさげたアリーナとスタジアムを回る大規模ツアーを、ここ10年近くの活動ルーティンとして行っている。「[(an imitation) blood orange]」の際はドーム公演の後にアリーナ公演を開催、「REFLECTION」の際はアルバム発売前にアリーナ公演を開催と一部イレギュラーな部分はあるが、アリーナ公演でアルバムの曲を一人一人に届け、スタジアム公演ではそれにエンターテイメント性をプラスしたステージを展開することで、生音でもしっかり伝わるようなライブツアーになっている。

今回の「重力と呼吸」でもアリーナツアー「重力と呼吸」があり、初の台湾公演を経て、年明けにドームツアー「Against All Gravity」が開催された。いまだJ-POPシーンのトップを走るミスチルのチケット応募倍率は相変わらず高かったが、2019年5月19日に行われた「Against All Gravity」東京ドーム公演のチケットを購入することができた。

 

当日の天候は良好で、ドームの中からも外の明るさを確認できるほど早い時間からの開演であった。

ステージには傾きを変えることができるLEDパネルとそこから中央に伸びる花道、その先にセンターステージが用意されていた。ミスチルのライブの特徴でもあるが、大きな会場だろうとステージの装飾はほとんどなくシンプルなデザインのものが多い。ただ、このツアーのステージの花道は電飾仕様となっておりさらにリフターシステムまで搭載していた。そのため、いつも以上に花道を生かした演出がなされていた。

田原さん、中川さん、ジェンさんがオープニングSEを演奏し終え、「Your Song」のイントロが流れると、花道の下から桜井さんが銀吹雪とともに登場しライブは幕を開けた。一曲目から大歓声に包まれたドームは、桜井さんがワンコーラスを歌うたびに拍手が起こっていた。続く「Starting Over」「himawari」とライト層にも広く知られた映画のタイアップ曲が連続したが、しっかりと力強い歌声をドームに響かせていた。

「everybody goes〜秩序のない現代にドロップキック〜」では始まったばかりの令和の時代を斬るような演奏でドームのボルテージを上げた。「HANABI」ではお客さんも一緒になって歌ったり「Sing」では一人一人がその歌に引き込まれており、大ヒットの名曲たちをこうした生の演奏で聴くと改めてその良さを感じることができた。

センターステージに移動した桜井さんがアコギを持つと「名もなき詩」をワンコーラス弾き語りのような形で演奏した。5万人という観衆の真ん中で、アコギ一本だけを持って歌うというとはなかなかできることではないが、それを当たり前のようにやってしまうどころかそれだけで観客を魅了してしまった。このような堂々とした立ち振る舞いをする桜井さんの格好良さに憧れる人も多いのではないだろうか。

今ツアーのセットリストは2005年のアルバム「I♡U」からの選曲も多く「CANDY」もその内の1つだ。そういえば、MCで桜井さんが「一流ミュージシャンが集まるBank Bandもいいけど、全員でボールを追いかける小学生のサッカーチームみたいなミスチルがいい」みたいなことを語っていた。「I♡U」というアルバムは、Bank Band結成後に作られた作品ということもあり、より一層ミスチルだからこそ表現できる音を求めたアルバムになっただろう。今回のアルバム「重力と呼吸」もセルフプロデュース作品ということで、「I♡U」の時と似たよう心境で制作されたのだろうか。

ファンの間でも人気の高い「旅立ちの唄」「ロードムービー」は、二人のサポートキーボードと共に丁寧に演奏され、穏やかな雰囲気で前半を終えた。

後半はアルバム「重力と呼吸」収録の「addiction」からスタート。新曲の中でも特にライブで映えるナンバーであり、ドーム5万人の観衆と声を出しボルテージを高めた。キレのある田原さんのギターが耳に突き刺さる「Dance Dance Dance」でさらに会場をヒートアップさせ、このライブ最大の見せ場である「Monster」が始まった。リフターシステムが稼働し、桜井さん一人が立つ花道がせり上がった。ドームのど真ん中、高台の上から命を削るように叫ぶその姿はまさに日本音楽シーンのモンスターの如し。桜井和寿という男がパフォーマーということを知らしめるかのような圧巻の表現力であった。

平成を代表するヒット曲でスタジアム公演ではすっかりお馴染みの「Tomorrow never knows」「innocent world」も令和の時代にもミスチルのアンセム的ナンバーとしてしっかり輝いていた。オーディエンスも一緒なって歌いドーム全体でメンバーの演奏に応えていた。

本編ラストの「海にて、心は裸になりたがる」では、桜井さんがステージの端から端までを駆け回り、ファンと共に叫びながらお互いの心を解放し合っていた。

アンコールはセンターステージに桜井さんが登場し、「SINGLES」からスタートした。アンコールといえど、しっかり想いの届くような選曲であった。むしろアンコールにこそ、このライブのメッセージが詰まっていたと言っても過言ではない。特に、「Worlds end」の《何に縛られるでもなく 僕らはどこへでも行ける》というフレーズは、25年経ってもなお挑戦と進化を体現し続ける“今”のミスチルだからこそ、より説得力のある詞となっていた。

アンコールラストは、アルバム「重力と呼吸」でもラストナンバーとなっている「皮膚呼吸」が演奏された。MCで今ツアー後にレコーディングを行うと言っていたこともあり、ミスチル自身にとっても、会場のファンにとっても未来への決意と今生きることを強く感じさせる選曲であったと思う。

 

全ての重力に逆らって…

今回のツアータイトルは「Against All Gravity」、直訳すると“全ての重力に逆らう(反抗する)”といった感じだろうか。ここでいう“重力”とは物理的な重力という意味だけでなく、ストレスなど我々が日々感じるマイナスなことや重荷になっていることも含めた意味がある。このタイトルは、ライブのコンセプトを表し、ライブに来てくれた人へのメッセージであることは、一目瞭然だろう。

では、ミスチル自身にとっての“重力”とは一体何なのか。年齢を重ねること、CD売り上げの減退、若手バンドの台頭、情報化する社会、時代の変化…もしかすると我々聴き手の安易な想像では語れないことかもしれない。

ただ、ミスチルが世の中の変化を恐れていないことは目に見えてわかる。例えば、当初はiTunesなどの配信には消極的な印象であったが、25周年のベストアルバムは配信限定でリリースされた。また、USBアルバムの発売、サブスクリプション解禁など、音楽形態が変化していく中で、CD売り上げが減退していることをただ嘆くのではなく、その変化を我が物にしているイメージがある。

メッセージ性のある歌詞やメロディアスな楽曲と変わらないミスチルらしさを持ちながらも、時代と共にこうした変化を見せる姿勢こそが、「Against All Gravity」であり、長年に渡って多くのファンから支持され続ける所以であると、聴き手の1人として強く感じる。

BUMP OF CHICKENの方舟に乗って。〈ツアー感想〉

3年半ぶりのオリジナルアルバム「aurora arc」

 

 

BUMP OF CHICKEN(以下、バンプ)といえばいまや誰もが知っているバンドである。リリースする楽曲にはタイアップが付き、大型フェスに出ればトリを任され、ツアーを開催すればライブハウスからアリーナ、スタジアムクラスと大小さまざまな会場を満員にしてしまう。かれこれ20年以上活動しているが、いまだに10代、20代のファンを増やし続けている印象がある。代表曲「天体観測」のリリースと同時期(2001年頃)に生まれたファンもいるだろう。こんなバンドは日本じゃそうそういない。このバンドを知るきっかけは様々にしろ、それだけ多くの人がバンプの世界観と藤原基央さん(Vo.&Gt.)のメッセージに惹きつけられているということだ。

そうした中、2019年7月10日に「Butterflies」以来、約3年半ぶりとなるオリジナルアルバム「aurora arc」がリリースされた。全14曲中9曲が既発のシングル(配信限定も含む)曲であるにも関わらず、初週CD売り上げは20万枚を超えた。ライブの先行抽選コード封入やライブ映像特典などはあるにしろ、このセールス実績はバンプがトップ戦線で活躍している証拠だ。また、このアルバムのリリース直前には過去に発売された作品のストリーミング配信も開始され、Apple Musicをはじめとするサブスクリプションユーザーの間で大きな話題となった。

 

さて、今回のアルバム「aurora arc」は名の通り、実際にオーロラを見に行って制作されたという。「aurora arc」というインスト曲から始まるこのアルバムは、ギターロック、アコースティックナンバー、テンポ感の良いものからスローなものまでバラエティに富んだ内容となっている。特に「ray」「Butterflies」あたりから多用されているシンセや打ち込み系の音は、今作でも世界観を表すのに欠かせない存在となっている。あくまで勝手なイメージだが、「ray」「Butterflies」そして今回の「aurora arc」と近年のバンプは光や色彩を大切にしている気がする。そしてそれらの楽曲にこうした打ち込みのサウンドを合わせることで、その光や色の輝きが何倍にも増していると思う。

元よりギターロックバンドの代表格であるバンプが、近年こうした打ち込み多様することについてはファンの間でも意見が二分するだろう。時代の流れともに打ち込みを使用するアーティストは増えたが、バンプの場合打ち込みをちゃんと楽曲の世界観に昇華させていることが大きな特徴だ。また、こうした打ち込みやシンセ音は近年のライブでも大きな効果を発揮している。

 

TOUR 2019 「aurora ark」 メットライフドーム初日

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アルバムの発売からわずか2日後の2019年7月12日、「aurora arc」を引っ提げたツアー「aurora ark」をメットライフドームからスタートさせた。このツアーはドームとライブハウスを交互に回るツアーとなっており、チケットは相変わらずの高倍率であったが、今回奇跡的にもメットライフドーム初日公演のチケットを取ることができた。

バンプにとってもメットライフドームでのライブはこれが初めてであり、平日かつ雨天の予報もある中多くのファンが駆け付けた。メットライフドームはドーム状の屋根はあるものの半屋外のような会場であり、猛暑日にも雨天にも不向きであるが幸いこの日は曇りで気温も涼しくそこまで苦ではなかった。

大型LEDビジョンが設置されたステージからは中央に花道が伸び、さらにアリーナ後方にもサブステージが用意され、スタジアム規模ながらファンに近いステージングであった。また、恒例となったリストバンド型LEDアイテム「PIXMOB」がオーディエンス一人一人に配布され、客も演出の一部として参加できる体感できるライブであった。

アルバム一曲目のインスト曲「aurora arc」のSEが流れ、メンバーが登場した後「Aurora」からライブは幕を開けた。一曲目からメンバーと客のシンガロング、さらに銀テープが飛ばされ、盛大なスタートとなった。続く「虹を待つ人」「天体観測」といった代表曲が演奏され、初めてバンプのライブに参戦した観客もライブの雰囲気に巻き込んでいった。

新曲「月虹」は「aurora arc」にて初音源化となったが、楽曲の評価は好調であり、ライブでもノリやすいナンバーであった。日替わり枠は「プラネタリウム」。10年以上前にリリースされた楽曲であり、序盤から早くも懐かしさのあまりに泣きそうになってしまった。そして、前回のスタジアムツアー「BFLY」で核となった「Butterfly」では、前回と同様に後奏を長めに演奏し、カラーテープが発射された。

「記念撮影」「話がしたいよ」と先行シングル2曲を演奏し、メンバーはサブステージへ。大海原に浮かぶ孤島のような小さなステージだったが、メンバーのテンションは高く、マイクスタンドの向きが振動で傾くほど跳ねていた。「リボン」とこれまた懐かしいナンバー「ダイヤモンド」のたった2曲だけであったが、後方スタンドのファンにはありがたい演奏であった。サブステージからアリーナを通ってメインステージに戻る際、アリーナのお客さんとハイタッチをする場面もありこうした部分にもバンプの人柄が表れていると感じた。

再び「aurora arc」のSEが流れメンバーがメインステージに戻ると、「望遠のマーチ」から後半戦がスタートした。スクリーンには歌詞が表示され、オーディエンスも一緒になって叫んでいた。その後、スクリーンにはステンドグラスや教会のような画が映し出され「アリア」の演奏が始まった。ドームの端から端まである大型スクリーンでありながら、LEDによる鮮明な映像はバンプのライブが視覚的な部分にもこだわって作られているという印象を受けた。

「Spica」や「ray」ではメンバーも積極的に花道へ出向き、ファンと向き合いながら演奏をしていた。新曲「新世界」では、藤原基央さんが珍しくハンドマイクでステージを縦横無尽に行き来しながら、《ベイビーアイラブユーだぜ》とドームを楽しませていた。

すっかり日も沈み外も暗くなったころ、「Supernova」の大合唱が行われた。外から入る涼しい夜風に吹かれながら聴くこの曲は格別であった。今風の言葉でいう“エモい”とはこういうことなのだろうと初めて思った。

本編最後は、アルバムでも最後に収録されている「流れ星の正体」。《全ての力で輝け》というメッセージを、この日一番伸びのある声で藤原基央さんは歌い上げ本編は終了した。

アンコールの前にメンバーによるグッズの紹介とドームの観衆をバックにした写真撮影があり、会場を和ませていた。

この日のアンコールは「宝石になった日」と「ガラスのブルース」の2曲が演奏された。特に「ガラスのブルース」はライブの定番曲であるものの、原点のような1曲であり、最後にもう一度メットライフドームが感動に包まれていた。

 

ベイビーアイラブユーだぜ

今回のライブツアーはアルバムも含め、メンバーがオーロラを見て際の感動をファンにも伝えたいという想いがあったという。実際にオーロラを見たことがある観客はあまりいないだろうし、勿論会場内にオーロラを作り出すことはできない。しかし、楽曲演奏とステージ演出によってオーロラのような幻想的で神秘的で華麗な空間が作り出されていたし、感動したものや影響を受けたものを音楽で伝える、音で表現するといったバンプのミュージシャンとしての姿に改めて感銘を受けた。

セットリストも含めたライブ全体の印象としては、夜空を“方舟”に乗って旅をしているかのようなものであった。楽曲もオーロラ、星、月、空などにまつわるものが多く、演出面でもドーム一面に広がる無数のPIXMOBは星が輝いているかのような光景であった。ドーム公演ということで「BFLY」同様有名な楽曲の多いセットリストであり、アリーナツアー「PATHFINDER」などに比べると少々ライト層向けなメニューだったのかもしれない。ただ、バンプが今発信したい想いやメッセージはドームという大きい会場でもしっかり届いていた、そのくらい充実したライブであったことは確かだ。

flumpoolと空白の1年を埋める旅へ。

2008年にメジャーデビューした4人組バンド「flumpool」。2018年、メンバーもファンも待ち望んでいたデビュー10年記念イヤーは空白のまま過ぎてしまった。

 

Re:imageから活動休止へ

遡ること2年前、2017年。「Re:image」というタイトルのもと、彼らは5月に行われた日本武道館を皮切りに、9月から12月までの全国ホールツアー、年末のカウントダウンライブと10周年に向けて精力的な活動を行う予定であった。しかし、ボーカル山村さんの喉の不調(後に歌唱時機能性発声障害であることが発覚)により、ホールツアーの一部とカウントダウンライブを中止、当面の活動休止という選択を余儀なくされた。

 

偶然にも活動休止発表直前の2017年12月2日に行われた、「Re:image」ツアーパシフィコ横浜初日公演に参戦していたため、この活動休止発表には驚きを隠せなかったのと同時にとうとう限界かとも思ってしまった。

12月2日のパシフィコ横浜公演は、正直なところあまりライブを楽しむことが出来なかった。一曲目の「World Beats」はボーカルエフェクトをかけた曲であるためそこまで気にはならなかった。しかし二曲目の「星に願いを」からは高音が出ていなかったり、声がかすれていたりとあの会場にいた誰もが山村さんの声の心配をしていただろう。本編ラストでは新曲「とうとい」という温かい楽曲を演奏したが、まともに聴くことが出来なかった。

 

そして、12月6日の夕方に当面の活動休止が正式に発表された。山村さんの喉の状態を受けての当面活動休止ということで、具体的な活動再開の目処が分からず、1ファンとして非常に落胆した。それは他のファンも恐らくはメンバーも同じであっただろう。せっかく「Re:image」という志で1年活動してきたのに、逆にイメージはマイナスになってしまったのだ。

また、皆が心底楽しみにしていたデビュー10周年の記念イヤーも無くなってしまったのは非常に悔やまれた。

 

空白の1年間を埋める旅へ

あの出来事から約1年が経ち、2019年1月13日。flumpoolの結成日であるこの日、大阪の特設野外ステージに彼らは戻ってきた。たった二曲のフリーライブではあったが、山村さんは声を取り戻したのだ。この日を境にflumpoolの活動再開が正式に発表され、FC限定イベントと全国ホールツアー「⌘⇧Z 」の開催も決まった。

活動再開はもちろん嬉しかったのだが、たった1年で治るものなのかと半信半疑であった。ただ活動休止直前のライブに行ってた者としては絶対に活動再開のツアーも行きたいという思いはあった。

 

「Re:image」ツアーで公演中心となった会場を皮切りに、空白の1年をファンと一緒にを埋めるかのような意味を持つ今回の全国ツアー。チケットは予想以上に倍率が高く取るのが困難であったが、ギリギリで2019年5月22日「⌘⇧Z」ツアー東京国際フォーラム公演のチケットを買うことができた。

関東公演初日かつ今ツアー最大キャパの当会場は平日にも関わらずflumpoolの復活を見届けようと超満員のファンが集まった。

開演まで楽しみな気持ちよりも不安な気持ちの方が大きかったが、一曲目「FREE YOUR MIND」の第一声がその不安を吹っ飛ばしてしまった。山村さんの声は完治のレベルを越えさらに進化していた。声量も声の通りも障害を患っていたとは思えないほど変わっていた。1年でここまで変わるものなのかという驚きでライブは幕を開けた。

「HELP」をはじめとする新曲や「しおり」「東京哀歌」「今年の桜」といった過去のアルバム曲まで幅広いメニューであったが、2年前のような余計な心配は全くなく、しっかりとflumpoolの音楽を聴くことができた。

困難を乗り越えて戻ってきたflumpoolのこのツアーは、空白の1年間を埋めるほどの充実感が確かにあった。久々に最高なflumpoolを見ることができたのであった。

 

「HELP」の先にある未来

近年、山村さん以外にも喉の不調を理由に、ライブの中止中断、休養をするボーカリストの方を多く見かける。喉は生身のものであるから、一度失うと取り戻すのは困難である。そのためリタイアや現場を離れる選択をする人もいる。

しかしいくらプロとはいえ、たった1年で元以上の状態に仕上げた山村さんの努力には本当に頭が上がらない。シングル「HELP」の特典DVDにその様子が収録されていたが、大した努力もしたことないのにただ半信半疑で待っていた自分が恥ずかしくなった。山村さんのこういう諦めない姿勢が多くのファンに支持され、新曲「HELP」にも強く反映されていると思う。

これまで波乱な状況をいくつも乗り越えてきたflumpool。また何かが起きても彼らはずっと4人のまま活動すると勝手に信じている。「HELP」その想いを全国に届けた後、どんな未来を見据えているのか、彼らの次のビジョンに期待したい。

 

HELP

HELP

 

 

21歳、スプーン1杯分の幸せをイエモンと。〈ツアー感想〉

9999にファンの1杯を加えて

9999

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2019年4月、THE YELLOW MONKEYが19年ぶりのアルバム「9999」をリリースした。そして、伝説の年間113本を完走した「PUNCH DRUNKARD TOUR 1998/99」以来、実に20年ぶりとなるアルバム全国ツアー「GRATEFUL SPOONFUL」がスタートした。

 

今回のツアーは日替わりで4種類のセットリスト♢♡♧♤が用意されており、会場ごと日ごとで違うメニューが楽しめるライブとなっている。前編では、2019年6月12日横浜アリーナ♡公演と2019年7月6日さいたまスーパーアリーナ♢公演を振り返る。

 

6月12日横浜アリーナ♡公演

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幸いなことに今ツアーは♢♡♧♤全公演行けるのだが、参戦初日となったのが6月12日横浜アリーナ♡公演であった。

解散前のツアーでも横アリは何度かやっていて、イエモン的には聖地に凱旋したような感覚だったろうか。

会場内には「ボナペティ」と愉快に歌われる未発曲が流れ気持ちがたかぶる中、いよいよライブの幕が開いた。一曲目から「天道虫」、続く「Alright」でオーディエンスのボルテージはいきなり最高潮。♡公演ということで「Love Communicatoin」「Love Homme」「Love Sauce」といった“Love”づくしのメニューで客を楽しませた。

アルバム「9999」の曲もライブで乗りやすい曲が多く「Balloon Balloon」「Titta Titta」はライブを見て好きになった人もいるはずだ。

「楽園」ではツアータイトル「GRATEFUL SPOONFUL」の由来にもなった《スプーン一杯分の幸せを わかちあおう》というフレーズが、「パール」ではド平日に集まったファンに向けた《負けるなよ》というフレーズが、いつも以上に輝いて聴こえた。

盛り上がる曲が多い中、ライブ中盤で演奏された「SO YOUNG」は♡公演の肝であったように感じた。

後半戦、横アリ初解禁の「追憶のマーメイド」、客席まで降りて演奏した「LOVE LOVE SHOW」、50代とは思えない色気を纏った「SUCK OF LIFE」と梅雨の横アリでロックンロールなステージが繰り広げられた。

本編ラストは「I don't know」。マーシャルのベースアンプから出るヒーセさんの重低音は体の芯まで響く迫力であった。

アンコールでは、大合唱の「バラ色の日々」「悲しきASIAN BOY」ともはやライブには欠かせないナンバーが横アリのファンとイエモンに一体感をもたらした。

ラストナンバーは「この恋のかけら」。アルバムでは一曲目であるが、《残された時間は長くはないぜ》という歌詞的にラストに聴くのもなかなかありな気がした。

最後にまたまた「ボナペティ」が流れ、ライブは幕を閉じた。

横浜アリーナ♡公演は、吉井さんも曜日を間違えるほどテンションの高く一体感のあるライブであった。

 

7月6日さいたまスーパーアリーナ♢公演

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参戦2日目となったのは、7月6日さいたまスーパーアリーナ♢公演であった。当初行く予定はなかったが、公演1週間前に急遽制作席開放発売でチケットを購入した。

この日はバンドの解散日である7月7日の前日ということで、メンバー的には特別な想いがあったようだ。

会場内にあの「ボナペティ」が流れたのち、エマさんのギターからライブはスタートした。一曲目は「この恋のかけら」とアルバム「9999」と同じ始まりであった。イエモンのアルバムの一曲目は、なにか物語が始まるドキドキ感がある曲が多くライブの始まりにもピッタリだ。続く「ロザーナ」「熱帯夜」とこちらもライブ映えするナンバーで会場はヒートアップしていった。

♢公演は比較的ドロッと重く攻めたナンバーが多かった。序盤から「砂の塔」「聖なる海とサンシャイン」といったで大人の世界観を感じさせ、「Breaking The Hide」ではキレッキレのサウンドでさいたまを虜にした。

そしてこの♢公演最大の見せ場が「天国旅行」であった。メンバーを映すモニターが消え、アリーナという大きな会場にも関わらず照明と演奏のみのステージは圧巻であった。吉井さんが長髪だったこともあり、映像作品で見た97年ごろの姿に見えた瞬間があった。

「Changes Far Away」で会場を温かい雰囲気にした後、「JAM」が始まった。平成時代を象徴するロックアンセムであるこの曲は、なにかと理不尽なことが多い令和の時代にも強いメッセージを放っていた。

「SPARK」では吉井さんが花道から客席方へ降りていき、アリーナでありながらライブハウス並みの近さで盛り上げていき、後半戦がスタートした。「Love Homme」ではグルービーかつブルージーサウンドで会場をノリノリにし、続く「天道虫」「バラ色の日々」「悲しきASIAN BOY」でボルテージを高めたまま本編は終了した。

アンコールでは「Titta Titta」「太陽が燃えている」といった明るいナンバーで再び会場を楽しませ、「SUCK OF LIFE」ではオーディエンスの期待に応えるかのように吉井さんとエマさんが絡み合い、皆がステージにくぎ付けであった。

ラストナンバーはアルバム「9999」と同様に「I don't know」で幕を閉じた。

この日は吉井さんも恐ろしいほど声が出ていたし、ヒーセさんのベースの音も横アリの時よりも綺麗に出ていた気がした。

イエモンさいたまスーパーアリーナでやるのは、再結成ツアー以来3年ぶり2度目であったが、すっかりものにしていた感じであった。

 

ツアー前半2公演を終えて...

♢公演と♡公演は2日間で1セットのような内容で、前者はイエモンの世界観とロックショーを体験する、後者はイエモンと一緒にロックコンサートを楽しむといったメニューであった。また、今までのツアーとは違いバックに流れる映像の演出にもこだわりが見られた。

 

再結成してから初めてとなるアルバムツアーは、アルバム「9999」の新曲を聴かせるだけでなく、♢公演と♡公演で既発曲をかぶらせないという、ファンにとっては2度美味しく、メンバー的にはチャレンジングなツアーになると思う。