オギロックフェス

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BUMP OF CHICKENの方舟に乗って。〈ツアー感想〉

3年半ぶりのオリジナルアルバム「aurora arc」

 

 

BUMP OF CHICKEN(以下、バンプ)といえばいまや誰もが知っているバンドである。リリースする楽曲にはタイアップが付き、大型フェスに出ればトリを任され、ツアーを開催すればライブハウスからアリーナ、スタジアムクラスと大小さまざまな会場を満員にしてしまう。かれこれ20年以上活動しているが、いまだに10代、20代のファンを増やし続けている印象がある。代表曲「天体観測」のリリースと同時期(2001年頃)に生まれたファンもいるだろう。こんなバンドは日本じゃそうそういない。このバンドを知るきっかけは様々にしろ、それだけ多くの人がバンプの世界観と藤原基央さん(Vo.&Gt.)のメッセージに惹きつけられているということだ。

そうした中、2019年7月10日に「Butterflies」以来、約3年半ぶりとなるオリジナルアルバム「aurora arc」がリリースされた。全14曲中9曲が既発のシングル(配信限定も含む)曲であるにも関わらず、初週CD売り上げは20万枚を超えた。ライブの先行抽選コード封入やライブ映像特典などはあるにしろ、このセールス実績はバンプがトップ戦線で活躍している証拠だ。また、このアルバムのリリース直前には過去に発売された作品のストリーミング配信も開始され、Apple Musicをはじめとするサブスクリプションユーザーの間で大きな話題となった。

 

さて、今回のアルバム「aurora arc」は名の通り、実際にオーロラを見に行って制作されたという。「aurora arc」というインスト曲から始まるこのアルバムは、ギターロック、アコースティックナンバー、テンポ感の良いものからスローなものまでバラエティに富んだ内容となっている。特に「ray」「Butterflies」あたりから多用されているシンセや打ち込み系の音は、今作でも世界観を表すのに欠かせない存在となっている。あくまで勝手なイメージだが、「ray」「Butterflies」そして今回の「aurora arc」と近年のバンプは光や色彩を大切にしている気がする。そしてそれらの楽曲にこうした打ち込みのサウンドを合わせることで、その光や色の輝きが何倍にも増していると思う。

元よりギターロックバンドの代表格であるバンプが、近年こうした打ち込み多様することについてはファンの間でも意見が二分するだろう。時代の流れともに打ち込みを使用するアーティストは増えたが、バンプの場合打ち込みをちゃんと楽曲の世界観に昇華させていることが大きな特徴だ。また、こうした打ち込みやシンセ音は近年のライブでも大きな効果を発揮している。

 

TOUR 2019 「aurora ark」 メットライフドーム初日

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アルバムの発売からわずか2日後の2019年7月12日、「aurora arc」を引っ提げたツアー「aurora ark」をメットライフドームからスタートさせた。このツアーはドームとライブハウスを交互に回るツアーとなっており、チケットは相変わらずの高倍率であったが、今回奇跡的にもメットライフドーム初日公演のチケットを取ることができた。

バンプにとってもメットライフドームでのライブはこれが初めてであり、平日かつ雨天の予報もある中多くのファンが駆け付けた。メットライフドームはドーム状の屋根はあるものの半屋外のような会場であり、猛暑日にも雨天にも不向きであるが幸いこの日は曇りで気温も涼しくそこまで苦ではなかった。

大型LEDビジョンが設置されたステージからは中央に花道が伸び、さらにアリーナ後方にもサブステージが用意され、スタジアム規模ながらファンに近いステージングであった。また、恒例となったリストバンド型LEDアイテム「PIXMOB」がオーディエンス一人一人に配布され、客も演出の一部として参加できる体感できるライブであった。

アルバム一曲目のインスト曲「aurora arc」のSEが流れ、メンバーが登場した後「Aurora」からライブは幕を開けた。一曲目からメンバーと客のシンガロング、さらに銀テープが飛ばされ、盛大なスタートとなった。続く「虹を待つ人」「天体観測」といった代表曲が演奏され、初めてバンプのライブに参戦した観客もライブの雰囲気に巻き込んでいった。

新曲「月虹」は「aurora arc」にて初音源化となったが、楽曲の評価は好調であり、ライブでもノリやすいナンバーであった。日替わり枠は「プラネタリウム」。10年以上前にリリースされた楽曲であり、序盤から早くも懐かしさのあまりに泣きそうになってしまった。そして、前回のスタジアムツアー「BFLY」で核となった「Butterfly」では、前回と同様に後奏を長めに演奏し、カラーテープが発射された。

「記念撮影」「話がしたいよ」と先行シングル2曲を演奏し、メンバーはサブステージへ。大海原に浮かぶ孤島のような小さなステージだったが、メンバーのテンションは高く、マイクスタンドの向きが振動で傾くほど跳ねていた。「リボン」とこれまた懐かしいナンバー「ダイヤモンド」のたった2曲だけであったが、後方スタンドのファンにはありがたい演奏であった。サブステージからアリーナを通ってメインステージに戻る際、アリーナのお客さんとハイタッチをする場面もありこうした部分にもバンプの人柄が表れていると感じた。

再び「aurora arc」のSEが流れメンバーがメインステージに戻ると、「望遠のマーチ」から後半戦がスタートした。スクリーンには歌詞が表示され、オーディエンスも一緒になって叫んでいた。その後、スクリーンにはステンドグラスや教会のような画が映し出され「アリア」の演奏が始まった。ドームの端から端まである大型スクリーンでありながら、LEDによる鮮明な映像はバンプのライブが視覚的な部分にもこだわって作られているという印象を受けた。

「Spica」や「ray」ではメンバーも積極的に花道へ出向き、ファンと向き合いながら演奏をしていた。新曲「新世界」では、藤原基央さんが珍しくハンドマイクでステージを縦横無尽に行き来しながら、《ベイビーアイラブユーだぜ》とドームを楽しませていた。

すっかり日も沈み外も暗くなったころ、「Supernova」の大合唱が行われた。外から入る涼しい夜風に吹かれながら聴くこの曲は格別であった。今風の言葉でいう“エモい”とはこういうことなのだろうと初めて思った。

本編最後は、アルバムでも最後に収録されている「流れ星の正体」。《全ての力で輝け》というメッセージを、この日一番伸びのある声で藤原基央さんは歌い上げ本編は終了した。

アンコールの前にメンバーによるグッズの紹介とドームの観衆をバックにした写真撮影があり、会場を和ませていた。

この日のアンコールは「宝石になった日」と「ガラスのブルース」の2曲が演奏された。特に「ガラスのブルース」はライブの定番曲であるものの、原点のような1曲であり、最後にもう一度メットライフドームが感動に包まれていた。

 

ベイビーアイラブユーだぜ

今回のライブツアーはアルバムも含め、メンバーがオーロラを見て際の感動をファンにも伝えたいという想いがあったという。実際にオーロラを見たことがある観客はあまりいないだろうし、勿論会場内にオーロラを作り出すことはできない。しかし、楽曲演奏とステージ演出によってオーロラのような幻想的で神秘的で華麗な空間が作り出されていたし、感動したものや影響を受けたものを音楽で伝える、音で表現するといったバンプのミュージシャンとしての姿に改めて感銘を受けた。

セットリストも含めたライブ全体の印象としては、夜空を“方舟”に乗って旅をしているかのようなものであった。楽曲もオーロラ、星、月、空などにまつわるものが多く、演出面でもドーム一面に広がる無数のPIXMOBは星が輝いているかのような光景であった。ドーム公演ということで「BFLY」同様有名な楽曲の多いセットリストであり、アリーナツアー「PATHFINDER」などに比べると少々ライト層向けなメニューだったのかもしれない。ただ、バンプが今発信したい想いやメッセージはドームという大きい会場でもしっかり届いていた、そのくらい充実したライブであったことは確かだ。